純粋な贈与の難しさ

確か大学に行っていた頃に、私の学習机を親戚の子供にあげたいんだけどいいだろうか、と母親に頼まれたことがあった。
私はもう使わないから別に構わないんだけど、机はお下がりじゃないほうがその子にとっていい、と主張した。
私はその時、買いに行ったときの思い出をかなり詳しく話した。なんたらデパートの何階で、おれが買った机はこういう位置にあった、と。どんなBGMが鳴り続けていたか、どんなに選ぶのに悩んだか。
自分の意見が尊重される数万円単位の初めての買い物なので、ものすごく嬉しかった。おれは覚えているし、忘れない。
経済的な理由だけでそんな事をするよりは、本人が望むものを与えたほうが絶対にいい、と。独立した人格として扱う最初の一歩なんだし。
あんたは本当にすごい記憶力だね、ことこう言うことに関しては。と、母は言った。そう言われたらそういうものだね、買うことを含めてうれしいものだからね。

結果どうなったのかは聞いていないのでしらない。