片渕監督のオールナイト感想

映画を見てきた。最近何となく動画を見るのが苦手になってきていて、席についたら嫌でも見続けなければならない、そういった状況を求めていた。
何か嫌なタイミングで物事が起きる、違和感がある、その程度で再生を停めていたり、他のことをしながら見て結局あんまり見れなかったり。三〇分の動画を見終わるのに数時間かかっていたりした。

片渕監督のオールナイト特集で、トークショーも面白かった。東映−日アニ−ジブリ路線と血みどろ路線という二つの傾向を持ち合わせ、揺れ動く、といったまとめ方は、他の作家でも通じるところがあるんじゃないかな、と思った。また経歴が複雑というか出てくる人名やつながりが意外で、興味深い話だった。
絵コンテ出版を巡る世知辛い話があった。アリーテ姫では疲れてる状態で描いて絵がへろへろで出版できないと言われ、最初から出版をもくろんで奥さんに絵を描いてもらったマイマイは、映画当たってないんでしょ、と出版社に言われ、たのみこむで署名中だそうだ。
桑島法子とマッドの丸山社長が途中で入ってきてちょっと舞台に上がっていた。桑島法子のラジオを聞いていた頃を思い出した。
アリーテ姫は十年前見た時とは印象が違った。十歳歳をとったので魔法使い側のほうにも感情移入してしまった。もちろんアリーテもいい。自力で、魔法によらずに魔法を解くところがすごくいい。前に見たときにはカエルと魔法使いの会話や後戻りのシーンで笑い声があったんだけど、六時間映画見てるとあんまり元気がなくなるのか今回はなかった。
マイマイは初めて見た。子供のころの感覚とノスタルジックな雰囲気がすばらしいジュブナイルだった。想像の世界への移行の描き方がアニメならではで面白い。
ホームズは別の音声版だった。技術的な巧拙が素人目(耳)にも分かるぐらいはっきりとしているならともかく、最初に聞いたものをスタンダードだと思ってしまう傾向がある。少なくとも私には。クラシックやジャズでも複数のアレンジを聞かされると最初のものとの差異と違和感の中で次のものを聞いてしまう。
そういうわけで音の違和感が面白かった。そして双子を独りでやってる声優の頑張りが印象に残った。
サミアどんはキャラデザが気持ち悪いというトークを聞いてから見たら、そういわれてみれば目が飛び出なくてもいいだろうに、と思うようになった。
うしろの正面だあれは初見だった。なるほど文部省が推薦するな、とか、もし母が見たらこのあたりで泣くだろうな、といった感じでドラマ部分は凡庸と言ってはなんだけど普通だった。初めて見るのになんども聞かされた話のようだった。日本家屋がちゃんと描けている、ということと、真面目な若本規夫のお父さんの演技を中心に見ていた。終わり方がちょっと意外だった。