隣人のラジオを切った話

昔隣人がトイレで倒れてその部屋のラジオを消したことがあった。
ある日二階の共同トイレが半日くらいずっと使用中で、仕方なく一階のトイレを使っていた。寝てるんだろうか、ひどい下痢なんだろうか、と思ったが何もしなかった。
トイレの中で鍵をかけたままその隣人は倒れていたらしい。別の隣人が救急車を呼んで大家と私たちが見てる前で救急隊員がバールで扉をこじ開けた。
もう少し早い時間で私がノックして呼びかけて、救急車を呼んでいたら良かったかもしれないし、それでももうだめだったかもしれない。
そして何日か後に、大家さんが消し方がわからないから隣人の部屋のラジオを消してくれと頼んできた。わからないならコンセントを抜けばいいのに。
万年床の枕の横にラジオがあり、なにか小さく人の話し声がした。扉を閉めれば聞こえない位なのに何でこんなものが気になったんだろう。ラジオにはありふれたスイッチがあり、それを切った。
彼はトイレで倒れたからすぐ見つかったけど、部屋で倒れたら匂いが部屋の外に漏れ出るまでそのままだっただろう。ラジオを鳴らしたまま。
彼は帰ることはなく隣は空き部屋になった。
私もきっとこのように孤独死するのだろう。