おねえさまは嘘を付くような人じゃありません

スポーツマンシップはめったにないから貴重なのかも知れない。と思うことが最近あった。
この文章は書いたかも知れないけどもう一回書く。私はエースをねらえを全話見ていないんだけど、昔同じ話を二度見たことがある。何回か再放送していて、偶然もう一回同じ話をしているのを見たんだろう。スポーツマンシップの話だった。寝る前か寝起きの早朝にぼーっと見た記憶なので違うかも知れないが、たしかこういう話だった。
ひろみと竜崎はペアを組み、あるトーナメントで試合で他校と対戦する。ひろみがラインギリギリのショットを決め、おねえさまを見ると、とんでもないことを言い出す。ひろみ、ラインぎわには打たないで、と。
おねえさまが怒ってらっしゃる、なぜか分からないけど。でもなにか理由はあるんだろう、と言いつけに従う。相手も何故かライン際には打ってこない。ハーフタイム(か天候による中断)におねえさまは話し始める。
今対戦している相手は、昔決勝(か何か大事な試合)で戦った相手だ。相手が打ったボールがライン際に落ちたとき、強い風が吹き、土埃で線審も主審も良く見えず、判断が別れてしまった。一番近くにいたおねえさまに意見を聴き、アウトですと答えた。相手は抗議するがおねえさまの意見が尊重され、それもあってその試合に勝った。
それ以降その対戦相手はどんなときもライン際を攻めなくなったらしい。それ以前は強かったのに、勝手に自分で縛りを入れて戦っているから、ここまで来るのに大変な苦労があったと思う。そしてそれは私のせいだ。
時々あのショットを思い出す、私の判断が本当に正しかったのか、一人の競技生命をいたずらに奪ってしまったのではないか、と。
ひろみは答える。そんなことはありません。おねえさまは正しいことをしたんです。テニスに対して真摯な人です。おねえさまは嘘を付くような人じゃありません。
自信を取り戻した主人公ペアはその奇妙なルールのテニスで勝つ。対戦相手はその態度に改心する。疑っていてすまなかった、これからもよろしく、うんぬん。対戦相手はずっと前髪で片目が隠れていたんだけど、強い風が吹いて以前の試合の時のように両目が出る。止め絵(違うかもしれない)。
試合の勝敗より大事なことがある。スポーツだから。
私はこの話がどんな位置づけなのか知らない。飛び飛びで半分くらいしか見ていないので、もっといい話があるのかも知れないけど、一番好きな話だ。信じる者、信じ合う者が、疑う者に勝つ。客観的な真実は誰にも分からないが、互いに信じ合うことで確定する。
奇妙なテニスに二人が勝ったときに、疑惑のボールの判定も確定した。
受けなくていい挑戦、やらなくていい制約に竜崎たちが従ってくれたことで、対戦相手は他人を、テニスを信じられるようになった。
途中で弱気になるお蝶夫人と、彼女を信じきっているひろみもいい。

出崎統さんのご冥福をお祈りします。